声帯除去
声帯除去を望まれる飼い主様には、当然さまざまなやむを得ない理由があります。 当院では問診時に再度、むだ吠えを改善するその他の方法をお勧めしますが、それでもなお改善は難しいという場合には、その後の飼い主様との生活を確保すべく、声帯除去手術を行っております。 当院での手術方法は、より確実に、そして再発が起こりにくい、喉頭切開法で行っています。
手術後のケアについて
入院期間は原則1日となります。退院後は安静にし、そのご1週間後に再診となります。
ご自宅にて異常が見られた場合は随時来院してください。
垂直耳道切除
垂直耳道とは 耳の穴(外耳孔)から鼓膜までの管を外耳道と言います。
外耳道は途中で折れ曲がっており、垂直耳道と水平耳道に分かれます。鼓膜より奥には中耳や内耳があります。
~垂直耳道切除適応条件~
① 難治性の慢性外耳炎
日常の診療において、外耳道疾患に遭遇する機会はとても多いです。一般的に外耳炎には耳の洗浄や投薬による内科的な治療が行われます。しかし慢性化した外耳炎は長期化すると、中耳炎や内耳炎に進展し、前庭症状や顔面神経麻痺をはじめとした重篤な症状を起こすことがあります。
【外耳炎の主な症状】
・耳垢(みみあか)の量が増える
・耳をかゆがる
・頭を振る
・耳を床にこすりつける
・耳から臭いにおいがする
・耳が赤く、腫れぼったくなる など
また、重度では、強い炎症による痛みがあり、耳の付近を触られることを嫌がる、耳道が腫れて耳の穴が塞がる、耳の中から膿(うみ)が垂れてくるなどの症状もあります。
【かかりやすい犬種】
垂れ耳の犬種(コッカー・スパニエル、レトリーバー、ダックスフンドなど) 外耳道に毛が密に生えている犬種(テリア、プードルなど)
② 外耳道内に発生した腫瘤性病変
耳の中にできた腫瘍が耳道を塞いでしまうと外耳炎を起こしたり悪化させたりする原因にもなります。
術後の管理
耳を糸で縫合しているため、ワンちゃんが耳を足で掻いたりしないようにエリザベスカラーを付け、様子を見ていきます。
状態を見ながら一週間前後入院して頂きます。
退院してからもエリザベスカラーを付けて生活します。1週間から2週間かけて抜糸をし、様子を見ながらエリザベスカラーも外していくような形になります。
また、外耳炎などは軽減されますが、なくなるわけではないので、その子に合わせた治療や管理が必要になります。
合併症
立ち耳のワンちゃんやネコちゃんの場合、術後にある程度変形が見られます。
軟口蓋過長症
軟口蓋過長症は、ブルドック、ボストンテリア、パグ、ペキニーズ、キャバリアなどの短頭種に発生する、短頭種気道症候群の一部をなす疾患で、短頭種の中で最も多く診断される呼吸器疾患です。
軟口蓋過長症の動物は、一般的に呼吸時に雑音が多く、呼吸困難の病歴をもちます。 興奮、ストレス、気温と湿度などの影響を受けて症状が発現し、運動不耐性やチアノーゼ、虚脱、失神、などを引き起こします。過長した軟口蓋は息を吸うたびに後方へ引かれ気道を塞ぎます。 喉頭粘膜に炎症が起こり、浮腫が発生する事によりさらに気道が狭窄し、致命的な呼吸困難を引き起こすことがあります。
軟口蓋過長症の動物は、鼻孔の狭窄、気管虚脱などその他の疾患を併発していることがありますので、その評価も行うことが必要となります。
耳血腫
犬の耳の構造
耳は音を伝達・感知する部分と、体の平衡感覚に関わる部分からなります。
解剖学的には外耳・中耳・内耳の3つの領域に分かれます。
犬の耳介は、柴犬やシベリアンハスキーの様な直立耳、ゴールデンレトリバーやキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルのような垂れ耳、グレーハウンドの様なバラ耳など犬種によって大きさや形が異なります。
外耳の構造
耳介・外耳道からなります。
耳介は、柔らかい軟骨の表面を皮膚が覆った構造をしています。
外耳道も大部分は軟骨で形成されていますが、鼓膜に面する部分は骨(側頭骨)からなっています。また、入り口から下方向に伸びる垂直耳道と、垂直耳道からL字状に約75°曲がって側頭骨側に向かう水平耳道と分かれます。
外耳道の表面は耳介から続く皮膚で覆われ、耳毛や(皮)脂腺、耳垢腺などの分泌腺を含み、これらの腺から分泌物の混合物が耳垢となります。
中耳の構造
側頭骨の一部が小部屋のように区切られた空間で、鼓室とも呼ばれています。鼓室には、小骨と耳管が含まれます。
耳小骨は、ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨の3種類から出来ており、鼓膜が受けた音の振動を内耳に伝えています。
耳管は咽頭と繋がっており、鼓膜の両側にかかる気圧を均等にしたり、中耳の病原体を咽頭経由で消化器官に排出したりします。
内耳の構造
もっとも脳に近い位置にあり、複雑な形をした骨の空洞(骨迷路)その中に同様の形の膜迷路という構造があります。
内耳の中には、音の振動を電気信号に変えて脳神経へ伝える、体の回転を感知するのに大切な三半規管があります。
耳血腫
耳血腫とは・・・
物理的刺激、その他の原因によって耳介に分布する血管が破壊されて内出血をおこしたために生じる疾患です。耳介内部に血液や血液を多量に含んだ液体が貯留する為、耳介が膨れ上がります。この状態は耳介に起こった血種であり、耳血腫を耳介血腫とも言います。
原因
現在、正確には知られていませんが、耳介やその周囲また外耳道などの急性あるいは慢性の炎症、外部寄生虫、異物、または腫瘍、ポリープなどが誘因となります。これらの誘因のため、犬は頭部を激しくふったり、耳を掻いたりします。この結果起こる耳介に対する打撲や、摩擦の為、本症が発生する場合が多いです。また、免疫系の関与も推測されます。
なりやすい犬種
中型犬~大型犬
ラブラドールレトリーバー・ゴールデンレトリーバー・ビーグル・マスティフ系(セントバーナードグレートピレニーズなど)など
特にレトリバー種に多いです。
症状
・耳介部が腫脹する
・耳を痒がる
・頭をよく振っている
・疼痛
・頭が傾いている
耳血腫の放置すると
・病巣の拡大
・不快感の持続
・外耳道の入り口を圧迫することによる外耳炎の持続
・耳介の変形
を招く為、改善と防止が早期治療につながります。
また、耳血腫になってしまうと悪化や再発を起こしやすくなってしまいます。
その原因として、軟骨周囲に強い炎症と浮腫が生じる、分離した軟骨どうしが癒着しにくいことがあげられます。
治療法
中に溜まっている貯留液を吸引する処置を反復するのみでは治癒することはほとんどありませんので、内科療法で様子を見る、または外科的治療を行います。
手術方法
直線状の皮膚切開を耳介の凹んでいる内側面に行います。
内容物を排出、洗浄し、死腔を完全になくすために縫合していきます。
術後
しばらくの間は耳を掻いたりして傷口を悪化させないようエリザベスカラ―をして頂く必要があります。